
映画『我々は宇宙人』「普通」ってなかなか難しい
金曜ブログ担当のせいたくです。
子どもの頃は「何か特別な人になりたい」。
大人になると「普通に暮らせれば十分」。
なかなか都合のいい話ですが、この「普通」と「特別」、意外とややこしいんですよね。
今回取り上げるのは、映画『我々は宇宙人』。
門脇康平監督による長編アニメーション作品です。

■ オリジナルアニメで、いきなりこれを作るのか
本作は、漫画や小説を原作としないオリジナルの長編アニメーション。
企画・脚本・監督を務める門脇康平監督にとって、初の長編作品です。
原作があれば、それを好きな人たちが公開を待っている。
すでに知られているキャラクターや物語もある。
オリジナル作品では、その入口から作らなければならないわけで。
いきなり長編アニメで勝負するというのは、なかなかの挑戦だと思います。
そして、公開後は口コミで評判が広がり、上映館も拡大。
9月25日の公開から1か月以上が経っても、上映が続いています。
観た人が誰かに勧め、その人がまた観に行く。
こういう広がり方をする映画は、やっぱり気になります。
そして今回、私も「これは誰かに言いたい」側になりました。
■ まずは、どんな映画なのか
舞台は平成の田舎町。
内気な少年・翼と、クラスの人気者・暁太郎。
小学3年生で出会った二人は、親友になります。
ところが、少しずつ周囲との関係が変化。
暁太郎はクラスの中で浮いた存在になり、やがて二人の関係を大きく変える事件が起こります。
そこから約30年にわたる友情を描く物語です。
設定を聞くだけでも、なかなか重い。
「懐かしいなあ」で気持ちよく振り返るには、ちょっと厄介な子ども時代が描かれています。

クラスの空気という、謎のルール
この作品を考えるうえで気になるのが、集団の中での立ち位置です。
昨日まで面白がられていたことが、今日は笑われる理由になる。
みんなが笑っているから、とりあえず自分も笑う。
おかしいと思っていても、自分が次の標的になるのは嫌だ。
こういう空気、子どもの世界にもありますよね。
しかも当時は、学校とクラスが生活のかなりの部分を占めている。
大人なら「そんな人とは距離を置けばいい」と言えても、それが簡単にできない。
だから、登場人物を外から眺めて「そこで助ければいいのに」と言うだけでは、話が終わらない。
自分だったらどうするか。
そこまで考えると、急に歯切れが悪くなります。

映像の細かさにも理由がある
監督のインタビューでは、学校の机の傷み方や、それぞれの家に置かれた物など、細部へのこだわりが語られています。
子どもの役には実際に子どもを起用し、声にも自然な説得力を求めたそうです。
こうした細かさは、物語との距離を近づける仕掛けなのだと思います。
見覚えのある教室。
どこかにいそうな同級生。
妙に納得できてしまう会話。
背景や人物が身近になるほど、そこで起きる出来事も他人事では済ませにくくなる。
細かく作り込むことが、そのまま話の重さにつながる。
この組み合わせが、本作の見どころでしょう。

小学校時代の記憶が、あまりない
物語の中心にいるのは、平成の田舎町で出会った二人の少年、翼と暁太郎。
子ども時代から続く、二人の関係を描いた作品です。
学校の空気や友達との距離感に、自分の昔を重ねる人もいると思います。
ただ、ここでひとつ問題が。
わたしは、小学校時代の記憶がかなり薄い。
「ああ、懐かしい」
「あの頃、こんなことあったな」
そういうノスタルジーに浸ろうにも、肝心の記憶があまり出てきません。
思い出の引き出しを開けたら、だいぶ整理されていました。

それでも、1時間58分ダレない
そんな私でも、最後までだれずに観られました。
ここは、話の構成と演出のうまさだと思います。
二人の関係がどうなっていくのか。
この出来事を、どう受け止めればいいのか。
ホラー要素にサスペンス要素。
自分の子ども時代を重ねられなくても、目の前の二人の物語としてちゃんと面白い。
1時間58分、しっかり引っ張ってくれます。

ラストシーンだけで、観た甲斐があった
圧巻の美しさでした。
何がどう美しいのかを具体的に書くと、これから観る方の楽しみを減らしてしまいそうなので、そこは控えます。
ただ、私はあの場面で、
「このシーンだけで、この映画を観た甲斐があった」
と思いました。
映像の美しさに、それまで見てきた物語が重なる。
ここまでの積み重ねがあるから、あの場面があそこまで美しくなるのだと思います。
道中もしっかり面白い。
そして最後に、あれを見せてくる。
いやーーーー、これはなかなか。
このシーンを最高にするための1時間58分。
私にとっては、そう言いたくなる映画でした。
小学校時代の記憶は薄い私ですが、
このラストシーンは、しばらく忘れられそうにありません。
おしまい

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